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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『定年退職』

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1963年の大映映画、監督は島耕二で、主演は船越英二、彼は化学メーカーの厚生課長で、あと9ヶ月で退職で、この頃は、55歳で退職だった。妻には先立たれていて、娘の藤由紀子は別の会社のOL(当時の言葉でいえばBG)であり、息子の倉石功は、受験を前にしている高校生。船越の定年後の、再就職のことや、船越とバーのマダム中田康子との関係もあるが、主筋は、藤由紀子と会社の別の課の社員本郷浩次郎との結婚話。要は、松竹から移籍した女優・藤由紀子の売り出し作品である。また、船越の部下の職員江波杏子の不倫などもある。全体として、小津安二郎の『秋刀魚の味』に感じが似ているのは、大映にしては珍しく脚本が元松竹の斉藤良輔だからだろうか。
               
だが、これを見て興味深かったのは、原作の源氏鶏太は、言うまでもなく住友にいた人で、彼の作品に住友での体験が影響したとすれば、「住友も随分と田舎の「村社会」的な会社だったな」と言うことだ。私は、1970年代に横浜市役所に入って、「村だな」と思ったが、民間企業も大して変わりがなかったというべきか。まず、社自体が、一つの村で、皆強い帰属意識を持っている。また、管理職から平社員に至るまで、その全人格的な姿が共有されていて、江波に言わせれば「私のプライバシーはどこにあるの・・・」ということ。その意味で、日本の会社等の姿をよく繁栄しているからこそ、源氏鶏太の小説はベストセラーになったのだと言える。東宝のサラリーマンものの最初は源氏原作の『三等重役』である。それにしても、大映には美人女優が沢山いたなあと思う。課長を退職後、自宅で書道教室をやっている人がいて、部屋の唐紙を開けると、和服姿の女優が山盛り。日本映画専門チャンネル


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