昨日の午後、ラピュタに行くと、『ここに泉あり』で、『帝銀事件』は昨日までだった。『ここに泉あり』は、3回目で、しかも長いので躊躇したが見ることにした。最初に見たのは、中学生のとき、クラシック愛好者の義兄の家でのNHKの放映。2度目は、川崎市民ミュージアムで、「もういい」と思ったが、どこかで暇を潰すならと見ると、長さが気にならなかった。みちろん、水木洋子のシナリオもあるが、出演者の多彩さがすごくて、厭きない。バイオリニストで、コンサートマスターとなる岡田英次が、高崎駅に来るところから始まる。喫茶店の二階に練習場があり、そこには雑多な連中がいる。十朱久雄、近衛敏明、清村功次、そして三井弘次と加東大介。三井と加東は軍楽隊出で、結局この二人だけが最後まで残ることになる。軍楽隊は、戦後の日本音楽界の出身者の源泉で、ジャズの渡辺貞夫もそうで、この映画の音楽の団伊玖磨もそうだ。芥川也寸志や、小津安二郎映画の斉藤一郎も軍楽隊にいた。ただ、これは芸大幹部の「軍楽隊なら戦場の最前線にはいかずに済む」との計算だったようだ。市民フィルハーモニーには、有能なピアニストの岸惠子がいるが、十朱久雄以下は、「戦時中のマンドリン楽団」で廻った連中で、皆仕事のあるアマチュアで、彼らは岡田の手で淘汰されてしまう、「下手だからだ」増村保造の映画『第二の性』で、ある電気会社の陸上部のコーチになった緒方拳は、安田道代だけを指導し、他の運動部員は「ただの運動愛好家だ」と切り捨ててしまう。そして、3年後東京管弦楽団と山田耕筰の指揮で、大合同演奏会が開かれる。室井摩耶子のピアノの凄さに、岸は自分との差を実感し、他のメンバーも実力の差を強く感じる。このとき、山田はすでに左半身マヒで、右手だけで指揮している。彼は戦後の1948年に脳梗塞で倒れたのだそうだ。その中で、マネージャーの小林桂樹の奔走で、農村等への移動演奏活動に精出していく。この辺のロケは非常に多彩で、撮影の中尾駿一郎の今井正作品への貢献は、あらためて大きいと思った。この言うことは大きいが、いつも最後は知り抜けというマネージャーの小林が非常に良いが、当時の左翼文化運動にはこうした人がいたのだと思うが、今井はそれを肯定しているようだ。それから数年後、山田は、マネージャーの伊沢一郎と共に旅行していて、高崎に来て、「あの楽団はどうしたかね」と聞く。伊沢は言う「潰れたらしいですよ、結局、地方ではまだ無理なんですな」だが、山田は高崎駅を降り、引き揚げ者住宅のようなところに、岡田以下の団員を見つけ、その演奏に自然と指揮してしまう。そして、合同演奏会となる。ベートーベンの『第九』の演奏に、かつての移動公演の様子が挿入される。そこには、草軽電鉄の貴重な映像もある。これは2時間30分だが、本当はもっと長く、テレビ放映のときに30分くらいプロデユーサーによって切られたとのこと。岸惠子とライバルの草笛光子の件があったそうだが、全くなし。最後の方で中学の先生役で、湯川れい子さんも出たそうだが、これもなし。最初の村の学校の生徒に、河原崎次郎の顔が見えた。
そして、歌舞伎座の映画『真昼の惨劇』を見た。監督野村企峰で、リアルでモノクロの強い画面で、東京のバタヤ部落で起きた、10代の姉妹による父親(福原秀雄)殺人事件が描かれる。妻は望月優子であり、二人の姉妹と男のこは、児童劇団の子のようだ。バタヤ部落の人は、紙類を回収する仕事をしており、今で言えばリサイクル業である。親分は清水元、住民には、左卜全、武智豊子などがいる。福原は、ろくに働かず、望月がニコヨンに出て得たわずかな賃金も取り上げて酒につぎ込んでしまう。酒と言っても、焼酎である。長女は、上野の惣菜屋で働き、店から土産でコロッケをもらって帰って来るが、そこに運悪く福原も戻って来て怒り、ちゃぶ台返し。普段は、鍋で米を炊き、塩を付けて食事しているのだから、コロッケは大御馳走なのだ。中で部落の演芸大会があり、左が浪曲の『30石船』、武智が『マンボ』を踊るが、どちらも様になっている。昔の役者は芸があったなと思う。ともかく、福原のアルコール依存はひどく、絶望した望月優子は、自殺しようとするができず、家を出てしまう。望月から唯一預かっていた4000円を福原が取り上げて、飲んでしまい、倒れて家に寝転がったとき、妹は言う、「父ちゃんなんて死んでしまえば良い」二人は決意し、弟を外に出す。俯瞰でバラック家屋が映された後、室内のシーンでは布をかけれられた男の体。二人は、自首して警察に捕まり、望月優子も新聞を見て警察に来ての再会。そして、国会議事堂が映されて「政治の貧困がこの惨劇を生んだ」とのタイトルが出るのには白けた。「それを言っちゃおしまいよ」と思う。実話に基づいたものだとのこと。福原秀雄は、不思議な俳優で、独立プロの映画で多数出て、気の弱い役を演じているが、日活ロマンポルノの藤田敏八の『実録不良少女・姦』にも、主人公の父親で出ている。
そして、歌舞伎座の映画『真昼の惨劇』を見た。監督野村企峰で、リアルでモノクロの強い画面で、東京のバタヤ部落で起きた、10代の姉妹による父親(福原秀雄)殺人事件が描かれる。妻は望月優子であり、二人の姉妹と男のこは、児童劇団の子のようだ。バタヤ部落の人は、紙類を回収する仕事をしており、今で言えばリサイクル業である。親分は清水元、住民には、左卜全、武智豊子などがいる。福原は、ろくに働かず、望月がニコヨンに出て得たわずかな賃金も取り上げて酒につぎ込んでしまう。酒と言っても、焼酎である。長女は、上野の惣菜屋で働き、店から土産でコロッケをもらって帰って来るが、そこに運悪く福原も戻って来て怒り、ちゃぶ台返し。普段は、鍋で米を炊き、塩を付けて食事しているのだから、コロッケは大御馳走なのだ。中で部落の演芸大会があり、左が浪曲の『30石船』、武智が『マンボ』を踊るが、どちらも様になっている。昔の役者は芸があったなと思う。ともかく、福原のアルコール依存はひどく、絶望した望月優子は、自殺しようとするができず、家を出てしまう。望月から唯一預かっていた4000円を福原が取り上げて、飲んでしまい、倒れて家に寝転がったとき、妹は言う、「父ちゃんなんて死んでしまえば良い」二人は決意し、弟を外に出す。俯瞰でバラック家屋が映された後、室内のシーンでは布をかけれられた男の体。二人は、自首して警察に捕まり、望月優子も新聞を見て警察に来ての再会。そして、国会議事堂が映されて「政治の貧困がこの惨劇を生んだ」とのタイトルが出るのには白けた。「それを言っちゃおしまいよ」と思う。実話に基づいたものだとのこと。福原秀雄は、不思議な俳優で、独立プロの映画で多数出て、気の弱い役を演じているが、日活ロマンポルノの藤田敏八の『実録不良少女・姦』にも、主人公の父親で出ている。