1971年に東宝で作られた酒井和歌子主演の映画、監督は出目昌伸で、脚本は鎌田敏夫だが、井手俊郎の潤色になっている。
銀行のOL酒井は、甲府から出てきて木造アパートで一人暮らし、恋人もいなくて同僚の赤座美代子とクリスマスだというのに、二人でコンパで飲む。
コンパと言うのは、1970年代に流行った西洋風のパブで、都会の若者で人気だった。中山千夏が、ルポで「まるで公衆浴場だ」と書いていたが、本当に汗と涙を流す場所だった。
さて、赤座は妻子ある男と付き合っていて、当初は酒井はそれを汚いこととして否定している。
だが、甲府では母親の森光子は、一人で居酒屋をやっていて、テニスクラブの経営者細川俊夫とは別居している。
そうした複雑な大人の関係を酒井は理解できないが、銀行の取引先の男で真面目な佐々木勝彦と普通の交際をするが、いつの間にか幼馴染で妻子ある医者の加山雄三とできてしまう。
酒井和歌子は、星由里子の後、加山雄三の相手役で、森谷司郎の『兄貴の恋人』は非常に良かったが、ここでも川崎のバーをやっている家の娘だった。
意外にも酒井は、都会の娘ではなく、地方出の女子が多いのはどうしてだろうか。
加山は、福島の会津の奥に赴任し、そこまで酒井は行くが、なんと妻の結城美恵子が子供と共にいる。結城は金持ちのわがまま娘で、田舎行きを嫌がっていたというのだが。
加山と別れて、一人で生きてゆくことを示唆して終わる。
『でんきくらげ』『やくざ絶唱』『しびれくらげ』『女体』『遊び』等で、常に自立する女性を描いてきたのは、大映の増村保造だが、出目もこの頃は女性にエールを送っていたのだ。
近年は、『霧の子午線』『玄海つれづれ節』等で失望しかない出目昌伸だが、この頃はまだ良かったのだ。
音楽が池野成だが、どこか武満徹を思わせるのが面白かった。
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