1971年9月松竹で公開された舛田利雄監督作品、同時公開は井上梅次の『人間標的』である。主演は渡哲也で、松竹と浅井事務所提携作品となっているが、浅井事務所とは、当時渡がいた事務所だとのこと。最初と最後が横浜だが、渡は、逗子あたりの花屋で働いている。オーナーは岩下志麻で、店はスナックもやっている。ある日、シーボニアのヨットに花を持って行くと氾文雀がいて、モーターボートに花を散らし、薬とワインを飲んで出て行く。見ていた若者が、「自殺だ!」と言うが、渡は「死にたい奴は死ぬさ・・・」と言って去ろうとするが、若者のボートが動かないのを見ると、故障を軽く直して海へ出て行き、氾を救う。シーボニアのさん橋に戻ってきて、新聞記者(山本幸栄)が写真を撮ると、渡はフィルムを引き抜いてしまう。だが、翌日の新聞に「人命救助」として顔写真が出ている。渡は、逃亡の身だったのだ。
また、店に花束の注文があり、行くと豪邸で、汎と藤木孝の婚約披露が行われている。汎の父の芦田伸介は、彼女を大企業の御曹司の藤木を一緒にさせようと仕組んでいる。かつては、過激派に加担していたこともある汎は、父に反発し、渡哲也に惹かれて行くが、そこに渡を殺そうとする青木義朗が神戸から来る。「あれ、これは・・・」と思うが、明らかに渡の『紅の流れ星』のリメイクで、原案が舛田利雄となっている。渡の名もゴロウで同じである。言うまでもなく、『紅の流れ星』は、石原裕次郎主演の『赤い波止場』のリメイクであり、『赤い波止場』の元は、ジャン・ギャバンの『望郷』である。文学のような個人的営為では、盗作は問題となるが、映画、演劇、ポピュラー音楽のような大衆文化では、創作は集団的行為で、盗作は問題ではなく、むしろ集合的無意識につながるものである。
『紅の流れ星』では、東京から神戸に逃げて来た渡が、浅丘ルリ子に逢って追いかけるが、ここでは、逆に汎が、渡を追いかける。そして、神戸から青木や、さらに深江章喜らが追ってくる。渡哲也は、組の親分の女とできてしまい逃げて来たのだ。そこの映像も色を落として回想されるが、その女(茅淳子)が浅丘ルリ子に似ているのが笑える。岩下は、二人を横浜の中華街に隠し、香港へ逃がす手配をする。ここも『紅の流れ星』では、ホテルの女主人細川ちか子が演じた役である。汎は、芦田と藤木の策略で、精神病院に入れられるが、渡は、彼女を救い出し、横浜の中華街のアパートに潜伏する。青木や深江、さらに横浜のヤクザの柳瀬志郎らによって二人は捜索される。この柳瀬も旧日活の俳優で、これはほとんど日活映画である。最後、汎は、芦田に連絡して、「私は家に戻るが、彼を逃してやって」と言い、山下公園の端の噴水のところに、全員が集まる。この汎文雀の言葉は、本心か否かよくわからないが、当然にも渡哲也は、深江らによって殺される。全体にできはさすがに良いが、一つ不満がある。それは、これは松竹ではなく国際放映で撮られたとのことで、『紅の流れ星』のような素晴らしい美術がないことだ。やはり、木村威夫さんのセットはすごいと思った。衛星劇場
また、店に花束の注文があり、行くと豪邸で、汎と藤木孝の婚約披露が行われている。汎の父の芦田伸介は、彼女を大企業の御曹司の藤木を一緒にさせようと仕組んでいる。かつては、過激派に加担していたこともある汎は、父に反発し、渡哲也に惹かれて行くが、そこに渡を殺そうとする青木義朗が神戸から来る。「あれ、これは・・・」と思うが、明らかに渡の『紅の流れ星』のリメイクで、原案が舛田利雄となっている。渡の名もゴロウで同じである。言うまでもなく、『紅の流れ星』は、石原裕次郎主演の『赤い波止場』のリメイクであり、『赤い波止場』の元は、ジャン・ギャバンの『望郷』である。文学のような個人的営為では、盗作は問題となるが、映画、演劇、ポピュラー音楽のような大衆文化では、創作は集団的行為で、盗作は問題ではなく、むしろ集合的無意識につながるものである。
『紅の流れ星』では、東京から神戸に逃げて来た渡が、浅丘ルリ子に逢って追いかけるが、ここでは、逆に汎が、渡を追いかける。そして、神戸から青木や、さらに深江章喜らが追ってくる。渡哲也は、組の親分の女とできてしまい逃げて来たのだ。そこの映像も色を落として回想されるが、その女(茅淳子)が浅丘ルリ子に似ているのが笑える。岩下は、二人を横浜の中華街に隠し、香港へ逃がす手配をする。ここも『紅の流れ星』では、ホテルの女主人細川ちか子が演じた役である。汎は、芦田と藤木の策略で、精神病院に入れられるが、渡は、彼女を救い出し、横浜の中華街のアパートに潜伏する。青木や深江、さらに横浜のヤクザの柳瀬志郎らによって二人は捜索される。この柳瀬も旧日活の俳優で、これはほとんど日活映画である。最後、汎は、芦田に連絡して、「私は家に戻るが、彼を逃してやって」と言い、山下公園の端の噴水のところに、全員が集まる。この汎文雀の言葉は、本心か否かよくわからないが、当然にも渡哲也は、深江らによって殺される。全体にできはさすがに良いが、一つ不満がある。それは、これは松竹ではなく国際放映で撮られたとのことで、『紅の流れ星』のような素晴らしい美術がないことだ。やはり、木村威夫さんのセットはすごいと思った。衛星劇場