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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『この二人に幸あれ』

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三船敏郎特集で、ほとんど見ているので、見ていないこれは非常に良かった。海運会社のサラリーマン小泉博は、畳屋の藤原釜足・清川玉枝夫妻の二階に下宿している。
                  
有望らしく、支店長の笈川武夫から自分の娘との縁談を言われると、急に白川由美が気になり、翌日映画に誘う。映画館は、有楽町の今はないスカラ座だが、見る作品は不明。映画の帰り食事をした後、小泉は白川にプロポーズし、受け入れられ、二人は幸福に浸る。だが、白川由美の父志村喬は愉快ではない。長女の津島恵子が、親の反対を振り切って三船敏郎と駆け落ち同然で結婚してしまったからだ。志村と妻夏川静枝の家は、渋谷の奥あたりで、女中も雇っているのでそれなりの格の家のようだ。互いの家の両親は賛成せず出席しないが、白川は三船と津島の後押しを受けて結婚式をあげる。場所は、乃木神社だが、現在よりも小さい。
小泉の同僚の田島義文は、支店長の娘と結婚し、現在の課長を大阪に左遷させて自分が課長になる。その課長の送別の宴会で、田島らのやり口に激怒して、小泉は田島らと喧嘩して会社を辞めてしまう。このサラリーマン生活の悲哀は、小津安二郎を代表とする松竹のお手のもので、映画『生まれてはみたけれど』は、戦前から大絶賛だった。だが、佐藤忠雄さんによれば、双葉十三郎さんでけは批判的で、「サラリーマンはあんなに卑屈じゃないよ」と自身も住友でサラリーマンの経験があった双葉さんは言っていたそうだ。
だが、妻にはいわず、小泉は毎日いつものように家を出る。職を探すが、当時は高度成長以前の不景気で、失業者70万人で、職は見つからない。小泉は、ある日公園で藤原に会い、また白川も会社の元同僚小泉幸子と会って、小泉博が退職したことを知る。失業を知って二人は喧嘩し、白川は三船らのアパートの来るが、三船に説得されて下宿に戻る。と、その日は停電で、ローソクで小泉が夕食をとるところで、双方がわびて仲直りしたときに、電気が点く。抱擁する二人。
              

三船が、より若い二人を暖かく見つめる男で非常に良い。オーケストラのホルン奏者というのも意外で面白い。監督の本多猪四郎の他、撮影の小泉一も特撮映画のスタッフであり、小泉、白川も東宝特撮映画の常連だった。どのようなジャンルの作品でもできたかという当時のスタッフ、キャストのレベルの高さを再認識した映画で私も幸福な気分になった。国立映画アーカイブ 長瀨ホール


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