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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『否定と肯定』

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去年、放送された作品だが、久しぶりに見ごたえのある作品を見た。

       

ハリウッド映画に一番貢献したのは、ナチスドイツだという説がある。戦後の洋画の悪役として最も寄与したのはナチスであることは明らかだろう。
ここでも、悪役はホロコーストを否定するイギリスの教授アービングで、演じるテイモシー・スポールがまさに因業で偏見に満ちた学者を巧みに演じている。
アトランタの大学で近代史を教えるデボラ(レイチェル・ワイズ)は、ある日公開の講演で、アービングに論争を仕掛けられ、さらにイギリスで訴えられる。名誉棄損で、不思議なのは、被告側が立証するのだと言う。
普通、英米法では、原告側に立証責任があり、それに対し罪状認否が行われ裁判が始まるものだが。
東京裁判でも、初日にこのアレインメント・罪状認否があり、東條英機ら被告全員が無罪を申し立てた。この時、無罪と言うのには、被告の中には「私にも責任の一端はあるが・・・」と言って「無罪」を申し立てることに抵抗のあった人もいたそうだ。

イギリスの裁判は、アメリカとは異なり、事務弁護士と法廷弁護士が分かれていることも非常に興味深い。
当初、デボラは、法廷弁護士を信頼していなかったが、的確で証拠に基づく弁論の鋭さに驚く。
途中で、アウシュビッツを経験したという女性が証言したいとデボラに申し出てくるが、法廷戦術で証拠だけで弁論するとのことで、それは実現しない。
最後、裁判長が「原告が本当にホロコーストがないと信じていたら・・・」と言い、デボラは敗北かと思い、アメリカに戻る。
そして、もちろん判決はデボラ側の勝利。
この映画にも、もちろんユダヤ系の資本が入っているのだと思うが、よくできている作品だった。

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