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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『日本映画講義・戦争・パニック映画編』 町山智弘・春日太一(河出新書)

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この二日間、寒くて外に出るのが嫌だったので、買ってあった本を読む。
映画漫談としては、非常に面白い。
取り上げられるのは、『人間の条件』『兵隊やくざ』『日本の一番長い日』『沖縄決戦』『日本沈没』『新幹線大爆破』、そして三船敏郎について描いたドキュメンタリーの『MIFUNE』
いろいろと知らなかったこともあり、参考になるが完全な間違いもある。

              

『人間の条件』についてで、カメラの宮島義勇が中国での戦争体験があるので、北海道ロケで満州の雲とは違うといって「雲待ち」をしたというところ。
宮島は、中国はおろか従軍体験がない。一応、戦争末期に彼にも徴兵令状が来たそうだ、だが東宝の責任者の森岩雄が、
「宮島は必要な男だから」と軍と交渉してくれて、代わりに玉井正夫を出した」
『ゴジラ』の、『浮雲』の玉井正夫である。しかし、「玉井君は、体が弱いとのことで従軍しなかった。結局、私は徴兵忌避者となる」と偉そうに書いている。
第一、宮島は、満州には行けなかったと思う。
なぜなら、満州、満州映画協会には、プロキノの先輩で委員長の監督木村壮十二がいたので、木村の下の宮島が行くはずがない。
また、ロケ地についても、鉱山は北海道と書いているが、これが秋田の小坂銅山なのは有名な話。

全体として、戦後の多くの日本映画の秀作が戦争に絡んでいたのは当然で、日本人と日本が、明治以降の近代で体験した最大の事件は、太平洋戦争とその敗北だったのだからだ。
いわば、戦後日本の戦争映画は、『平家物語』のような国民的叙事詩だというのが私の考えである。

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