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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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山本薩夫監督の特殊性

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ラピュタで、山本薩夫監督の作品を何本か見て、その特殊性に気づいた。
特殊性というのは、今井正、家城巳代治らの「左翼的監督」との差である。
今井や家城には、センチメンタリズムが色濃くあるのだが、山本にはほとんどないのだ。
逆に、アクションシーンが多い。この差は、どこから来ているのだろうか。
多分、それは山本が、元は画家を目指していたことから来ているように思う。

その意味では、黒澤明と似ているわけだ。
黒澤明も、もともとは画家を目指し、東京芸大を受けたが落ちた。そして、プロレタリア美術研究所に通って作品も発表しているのだ。
その意味では、晩年の『夢』のラストシーンの村のパレードのように、黒澤明は、プロレタリア美術作家だったと言えるかもしれない。
これを今はない、横浜ニューテアトルで見た時のことは忘れられない。
「これは、まるで日共民青の歌声運動ではないか」
山本も黒澤も、左翼的運動の後に、若手経営者のベンチャー企業というべきPCLに入り、助監督として映画界に入っている。
だが、この二人の晩年はきわめて対照的で、黒澤明は身内としか映画が作れらくなったのに対し、山本は大映での『忍びの者』『傷だらけの山河』『白い巨塔』のヒットで、各社で娯楽大作を作るようになる。
『金環食』に至っては、山本を追放した東宝での作品である。

            

一方、黒澤明は、大映の後継会社で『まあだだよ』を作り、赤字で倒産させてしまうのである。
これもなぜか、横浜ニューテアトルで見たが、実につまらない作品だった。


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