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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『人間の壁』

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昔、横浜で見たが、もう一度見ようと阿佐ヶ谷に行くと満員だったが、なんとか座れる。
ここは、フィルムセンターが休館の月曜日は避けたのだが、夏休みのせいか女性が多い。



原作は、石川達三で脚本は八木保太郎で、短い挿話で話が続く。
今回見て気づいたのは、製作に大東映画が入っていること。これは、滋賀の映画館チェーンで、後に今井正の『キクとイサム』や山本薩夫の『武器なき戦い』を作る会社である。
要は、この時期から邦画は2本立てとなるが、大手の系列館は良いが、独立系は作品がまわって来ない場合があるので、独自に制作することになったのだと思う。
この傾向は、後にピンク映画全盛となっていくのだが、それは先の話。

佐賀県の日教組の話で、田舎の小学校の女教師香川京子が、津田山市に赴任してくると、極貧の家庭の子が多数いる。
炭鉱をクビになったので、崖の洞窟に住んでいる親子など、信じがたい貧困。
そこに市教育長小沢栄太郎から、退職勧奨が言われる。県、そして市の予算が不足で、共稼ぎの女教師には優先して辞めて欲しいというのだ。
老女教師の高橋とよも同じで、彼女は何度も勧奨されて最後は辞めてしまう。
校長は、松竹の清水一郎。サイレント時代からの二枚目で、小津安二郎映画にも出ているが、山本映画に出ているのは、松竹時代からのつながりだろうか。
教師は多様で、家庭教師に精出している現実派が高橋昌也、熱血派の教師が宇津井健、化粧に精出すのは三ツ矢歌子など。
香川京子の夫は、南原伸二で、組合の専従になっているが、本当は出世主義者で、婦人部長の沢村貞子に手を出すところなども最高に笑える。
南原は、組合の委員長永田靖に対抗して委員長に立候補するが、落選し、そのへんから香川との間もヒビが入り、離婚する。

組合と教育委員会、市の保守派との対立は先鋭化し、真面目な教師の宇野重吉が、びっこの生徒をからかった子供を叱責すると、「暴力教師」とされて、最後は退職にまで至り、香川は自分たちを守るには連帯しなければとその校の組合役員になることを承諾する。
殿山泰志や北林谷栄、嵯峨善兵衛、東野英治郎、福原英雄などいつもの独立系映画の俳優たちが多数出ている。
だが、ご健在なのは香川京子だけだどうと思う。
阿佐ヶ谷ラピュタ


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