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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『僕たちの失敗』

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1962年の公開当時、かなり騒がれた映画だったが、今回初めて見ると非常に変な映画である。
原作は石川達三、脚本白坂与志夫で、監督は須川栄三。
市川染五郎と桑野みゆきの共演が話題で、染五郎が非常に変な男である。



帝大と言っているので、東大卒だろうが、カメラ工場の工員をやっている。旭光学で、黒澤明の『一番美しく』は日本光学だったが、ここでは旭ペンタツクスの旭光学だが、やはりレンズ磨きは、『一番美しく』の頃と変わらない機械が動いている。
そこで、染五郎は、同じ工場の女工の桑野みゆきに一目ぼれして、初めて会った夕方、自分の車の中で求婚する。
それは、3年間の契約結婚で、これは岡田真澄と嵯峨三智子との契約結婚で有名になった言葉である。
染五郎は、合理主義者で、結婚式も挙げたくないが、上司の伊藤雄之助の助言で近所の神社で安価に上げるが、式が終わるとすぐに逃げて旅行に行ってしまう。
その夜、桑野から別居婚を言われ、大賛成する。桑野は、染五郎の母轟夕起子と同居したくなかっただけだが、染五郎は「素晴らしい」と大賛成する。
染五郎に惚れている若林映子、児玉清と水野久美夫妻など東宝の若手スターも出てくる。
児玉は、子供に目のない家庭的な男だが、酔って車に撥ねられて脳に障害を受け会社を首になるが、水野曰く「下半身は元気」の悲劇。
最後、若林に惚れている藤木悠が彼女を刺して大事件になる。
その元の原因は「お前だ」と染五郎を批難するが、なんと彼は轟夕起子と再婚してしまう皮肉。
桑野は妊娠したので、別居婚をやめて染五郎の実家に来るが、染五郎は行方不明になる。
彼は、一切のしがらみを嫌って家出して、トラック運転手になったのだ。

この映画の根本は非常におかしいと思う。それは、この脚本の白坂にしろ、同世代の寺山修司にしても、「いずれ家庭は崩壊してみんな自由な友達になる」と思っていたらしいと考えられることだ。
ただ、この市川染五郎は、ラジオ等を半田ゴテで作っている男で、一種の「オタク」なのだろうと思う。
日本映画専門チャンネル

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