たしか太宰治の本に「子供の心は純粋だというのは嘘で、薄汚れたものだ」というのがあったが、私もそう思うので、こういう純情映画は好きではない。
原作は井上靖で、舞台は伊豆湯ヶ島付近の農村、洪作(島村徹)は祖母北林谷栄と住んでいる。
上の家と呼ぶ本家は、清水将雄が当主で、祖母は誰かわからなかったが調べると細川ちか子で、北林は先代の当主のお妾さんだったようだ。
洪作の父は芦田伸介、母は渡辺美佐子だが、芦田が軍医で、浜松にいるので北林のところにいる。
これは小津安二郎が、中学までは東京ではなく松坂で育ったように、子供は田舎で大きくなった方が良いという当時の思想からなのだろうか。
そこで、季節季節で起きる行事が劇の中心で、脚本が木下恵介なので、小学校唱歌に連れてドラマが進行するが、日本人の涙腺を一番刺激する構成である。
叔母の芦川いづみのさき子が、女学校から戻ってきて、小学校の先生になる。校長の宇野重吉も叔父だそうで、村全体が親戚みたいなものである。
美しい芦川をほっておく馬鹿はいず、同僚の山田吾一とできてしまい、妊娠する。
北林は反対で、「さき子は、祝言を上げる前にややこを作りやがって・・・」と批難する。
そして、さき子は一応結婚し子供もできるが、結核に罹って死んでしまう。
この映画の道徳律から言えば、未婚で子を作った女性は罰せられるということなのだろうか。
監督は、私が贔屓の滝澤英輔だが、芦川いずみの美しさを加味しても、あまり感心できない作品だった。
もう1本の『神阪四郎の犯罪』は非常に面白くて堪能した。
阿佐ヶ谷ラピュタ