今も忘れられないオリンピックの試合と言えば、1964年の東京オリンピックの柔道無差別級の決勝戦である。
オランダのヘーシンクと日本の神永の対戦で、ヘーシンクに押さえ込まれた神永は、足を動かすが体はまったく動かすことができず押さえ込まれ,神永の負けになった。
審判の手が上がり、ヘーシンクの優勝が決まったとき、驚いたのは彼の次の行為である。
喜びのあまり、畳に上がろうとしたオランダの男をヘーシンクは、右手を上げて静止したのである。
この時、日本人は、本当に負けたと思った、ヘーシンクは柔道の精神をきちんと分かっていて、行動で示したのだ。
約30年前、私がパシフィコ横浜にいるとき、新日鉄から来ていた山中邦捷氏が、一人の大人しそうな男を連れてきて、社長室で高木文雄社長に面談していた。
終わって、その男が事務室を出て行った後、山中氏は言った。
「あれは神永ですよ」
「へえ、あの大人しそうな人が神永だったのか!」と思った。