世に隠れ芦川いづみファンは多いが、私は大学1年の時から隠れではない、公然とした芦川いづみファンである。
原作は田宮虎彦で、脚本は三木克己こと東宝の井手俊郎、監督は抒情派で、元は鳴滝組でもあった滝澤英輔である。
話は芦川の回想でつづられていくが、父の下元勉は、国文学者で真面目で非常に厳格で、高校時代に同級生の沢本忠夫と書斎に入っただけで叱責されてしまう。
大学生の時、下元は心臓病で急死してしまい、母の月丘夢二は、大邸宅を売って永福町の家に代わる。この斡旋をしてくれたのが、カメラ会社社長の金子信夫で、芦川は金子に反感を抱いている。
芦川が、都庁の役人の小高雄二と見合いして、その後ストーカーのように付きまとわれる筋もある。がさつで遠慮のない小高を本能的に嫌っているが、一体芦川はどういう相手を求めているのかは分からない。
戦時中に疎開していた房州の漁師(近藤宏なのが笑える)の妻となった香月美也子、その夫らが海で遭難しかけたり、やはり房州で友達だった高田敏江が、貧乏な工員の杉幸夫と明大前で暮らしているのなども挿入される。
最後、月丘は、自分と下元勉とのことを話す。
もともと月丘は金子と付き合っていたが、親の決めたお見合いで下元と結婚したこと。決して金子との間の子ではないと断言する。
もともと学者の下元の家が大豪邸なので、これはおかしいのでは思っていたが、元は金持ちの家の出だったのだろう。永福町の小さな家に移っても、女中のばあやがいるのだからすごいが、扶助料、つまり遺族年金は8,000円だと言っているのだが。
高校の先輩の医師が研究者の女性と幸せそうな結婚をしたところで、芦川は家を出て、出版社に勤める決意をしたところでエンド。
一体、この映画は何を言っているのだろうか、あえて言えば女性の自立と恋愛結婚の勧めだろうか。
この1959年は、現在の天皇陛下と美智子様がご結婚された直後であり、見合い結婚は不幸の始りと考えられていた時代だからである。
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