前から気になっていたが、見て唖然としたひどい映画である。市川崑の映画では最低だろう。やはり彼は『細雪』が頂点で、その後は惰性だったのだろうか。
美術、撮影、照明等は素晴らしいが、中身が信じられないほどにひどい。
2001年という、小泉構造改革で浮かれていた時に、こんな貧乏話をやっても、リアリティがあるわけもない。
天明の頃、江戸の貧しい人間が住む長屋に、若者(原田龍二)が泥棒に入るが、おかみさん(岸恵子)の気づかいや子供たちとの交流の中で、まじめな人間に再生していくというもの。
バカじゃないか!
ただ一つ良いのは、夜の室内のシーンが非常に暗いこと。最近の時代劇では、夜の室内でも照明で煌々と役者が照らされているが、電気照明がない江戸時代に、そんなことはもちろんなかった。
こうした明るい照明は、NHKの「大河ドラマ」が始めたことだと思うが、まことに困ったことである。
衛星劇場