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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『アラビアの女王』

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20世紀の始まり、イギリスに生まれ、富豪の娘として社交界にデビューするが、相手が見つからないベルは、叔父が赴任していたペルシャ(イラン)のテヘランの大使館に行き、そこの美しさに魅了される。

また、アラブの人が誇り高く自由に生きているのにも感動する。

イギリスは、当時から今日に至るまで強い階級社会であり、多くの人はその階級の中でしか生きられないようだ。

そこから、中東の文物、地理、民族の研究、考古学に進み、後にカイロにあったイギリス・アラブ局の責任者になったガールトールド・ベルの生涯を描く作品。

監督・脚本は、ドイツの監督ベルナー・ヘルツウォークで、主演はニコール・キッドマン。

                          

 

ベルの業績で最大のものは、中東地域の境界線を決めたサイクス・ピコ協定の原案を作ったことである。

図らずも、今年はサイクス・ピコ協定締結100年で、今に続く中東の紛争の原因を作り出した元凶だとも言える。

だが、彼女や、アラビアのローレンスのT・E・ローレンスらが意図していたのは、もっとアラブの自治を認めるものだったようだ。

アラブの現地の撮影は、ヨルダンとモロッコで行われたようで、砂漠の景観は実に素晴らしい。

ただ、描写は比較的淡々としており、D・リーンの『アラビアのローレンス』のようなドラマ性を期待すると当て外れになる。

私の席の後ろでは鼾が聞こえた。

D・リーンも中東やアジアへの興味が強かったが、ヘルツウォークも南米での『アギーレ』『フィッツカラルド』など、異国趣味があるようだ。

古くは小泉八雲に代表されるように、欧州の人の中には、アジア、アラブ、ラテンアメリカ志向の人間がいるが、こうした方は、我々の先人で、その遺産に大いに感謝せねばなるまい。

文化人類学が植民地学であり、考古学もその源流の一つであったことがよくわかる映画である。

黄金町シネマベティ


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