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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『侍』

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特に見るものない時に見たくなる映画の1本である。

筋は、「人を切るのが侍ならば・・・」の徳山璋の大ヒット曲の『侍ニッポン』の新納鶴千代が、親とは知らずに自分の父親の老中井伊直弼暗殺の桜田門外の変に加わり、見事井伊の首を取ってしまう悲劇である。

                                  

 

その前に、鶴千代の三船敏郎は、暗殺団の中で唯一心を許した親友の小林桂樹を、敵方に通謀しているとい誤った憶測で殺す悲劇にも遭遇している。

この二人は、群を抜く剣豪で、互いにその腕を認め合い、親友になったのだが、小林を殺すことが決まると、彼に敵う者は三船しかいないとのことで、突然に呼び出して、三船は物陰から出て突然、小林に剣を振りかざす。

その時の小林の台詞、

「新納、なぜだ、なぜだ」が悲痛である。

そして、裏切り者は小林ではなく、副将格の平田明彦であることが分かり、怒る三船に首領の伊藤雄之助は言う。

「もそっと血を冷やさないといけない。向こうに勝つには、こっちの手も血に汚れないといけないのだ!」

この辺の橋本忍のリアリズムが、他の『侍日本』がただの時代劇であるのと一線を画している。

また、この映画で三船はあまり迫力あるチャンバラを見せないが、この小林桂樹を殺すところ、3月3日の夜明け、新納鶴千代が実は井伊の子であることを知った伊藤が、三船を殺すために差し向けた暗殺団との殺陣。

さらに、最後の桜田門外の井伊の行列の者たちと伊藤以下の暗殺団との格闘は物凄い。

当時、日本映画史上最高の殺陣と言われたが、やはり今見てもすごい迫力である。

そして、井伊直弼役の松本幸四郎(先代)は、言う「いくら何でも徳川の屋台骨、そんなに弱ってはいないぞ。もし、殺されることがあれば、日本から侍がいなくなることだ」

事実は、そうなったわけで、彼は最後も「馬鹿め!馬鹿め!」と言いつつ、三船に殺されてしまう。

岡本喜八も、黒澤明の後、一番上の東宝の監督とされていたのに、整理されるとは非常に不当な事だったと言えるだろう。

 


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