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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『極楽金魚』

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日本シリーズが日本ハムの4連勝で土曜日に終わってしまい、日曜日はどうしようかと思っていると、斉藤朋君から横浜ボートシアターの公演で『極楽金魚』の招待を受けたので、南軽井沢に行く。

横浜の人はご存じだろうが、軽井沢と言っても長野の軽井沢ではなく、横浜の西区軽井沢であり、簡単に言えば横浜駅の奥、ミッ沢の下の地域である。

お屋敷町でもあり、この日公演が行われたのは、稲葉さんというこの地域の大地主の昔のお屋敷である。

10畳ほどの平屋の家屋の床の間、仏壇付きの部屋で、恐らく一番重要な場だったと思われる。当日は少し寒かったが、こうした日本家屋は本来夏用にできていて、夏は非常に涼しく、クーラーなど一切いらないものなのだ。

このような日本の家屋の構造に見られるように、日本の民俗的な基層は、アジアの南方からのものであることがよくわかる。

                 

 

『極楽金魚』の前に、宮沢賢治の『どんぐりと山猫』の一人芝居が行われ、非常に面白かったが、同時に私が宮沢賢治が苦手な理由もよくわかった。

これは、ある日一郎のところに、山猫から手紙が来て山に行くのだが、そこで一郎は木々や動物と交流し、会話するのである。

泉鏡花の物語と同じで、ここには動物や植物との交流と会話があり、これがどうにも理解できず、ここでいつも鏡花や宮沢賢治には挫折してしまうのである。

もちろん、世の中には動物や植物と会話できると信じている方もいるわけで、心理的には精神病理的なものなのだろうが、私にはないので理解できないのだ。

そして、もちろん最後は、一郎は家に戻って日常の生活になる。精神病理学的には、入眠幻覚の一種と言えるのだろうと思う。

休憩後は、影絵芝居の『極楽金魚』 これはかなり有名な劇で、世のアングラ劇の開祖の一つで、1967年代々木小劇場で、劇団変身によって行われ、私の友人は見たそうだが、残念ながら私は見ていない。

この時は、すでに亡くなられた青年座の今井和子と、その後に『土佐源氏』の一人芝居で有名になる坂本長利さんによって演じられたそうだ。

話は、高松に伝わる「ほうこうさん人形」とその詞書から想像したものだそうで、貧しい農家の娘が富豪に買われ、富豪の息子が謎の病気で高熱を出す。

「これはいずな付き」の仕業だとされ、その熱を取るには、女の体と交わって熱を移動させれば良いのとのことで、娘は息子に交わり、無事息子の熱はなくなる。

そして、娘は昇天し、富豪が飼っていた極楽金魚になる、というものだった。

いずな付き、とは狐付きと同様であり、かの『るつぼ』の魔女狩りに似た、狐憑き狩りを想像させる。

作・演出の遠藤琢郎さんに終了後にお聞きしたところ、アーサー・ミラーとは全く無関係で、文楽から思着いたとのことだった。

しかし、世界の民衆の中に、思春期の男女の持つ性的な情動に対して大きな不安があったことは確かだと思う。

それをかっては魔女狩りのように誤った方法で退治したわけだが、今日では、AKB48やEXILE、あるいはさまざなロックの公演とそれへの若い男女の熱狂が、性的情動の緩和、そのはけ口の役割を果たしていると私は思う。

そう考えれば、かつて1960年代後半の過激派の若者の政治的アクションンも、こうした性的情動の一つとも考えあられるのではないかと思ったのである。

 

 

 


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