シネマベーラの荒木一郎特集、『鏡の中の野心』と「日本春歌考』。
どちらも非常におもしろかった。とくに、前者に、小林悟監督で、かなりひどい手抜き作品もあるので、平気かと思うが、荒木が口から出任せの詐欺師で話もよくで来ている。
脚本は、マツケンこと、松浦健郎だが、若手に書かせたのだろうか、テンポも良い。荒木が、二言目には、フランス帰りを言うのが可笑しい。
彼が、口から出任せで、白石奈穂美の美容学校を乗ってしまい、ひしみゆり子も手にして出来て、海岸を彼女が全裸で走る。荒木も走るが、彼はパンツを穿いている。
これは、アラン・ドロン映画の真似だが、ドロンは全裸だったので、ぼかしがあり、膝までのぼかしだったので、そんな巨根なのか、と言われたものだが。
さすがに荒木なので、音楽が良い。
『日本春歌考』は、公開時以来見ていなかったが、結構面白い映画だった。政策の動機は、言うまでもなく建国記念日の制定で、黒丸旗を掲げた連中、渡辺文雄、福田善之らが行進。
話は、前橋から大学受験で東京に来た高校生荒木一郎、串田和美、佐藤博、岩渕孝次、さらに吉田日出子、宮本信子、引率の先生伊丹一三の話。田村孟がシナリオ学校で教えていて、生徒の先生がガス中毒しつつあるのを見過ごす話をヒントにしている。
死んだ伊丹が騎馬民族の研究家になっていて、同期生たちの不毛さが皮肉に描かれる。小山明子が、伊丹の恋人の設定で、世代ごとの、歌によって違いが描かれる。
春歌と労働歌、そして当時流行していたフォークソングであるが、大島らは、春歌の方にシンパシーをいだいているように見える。
反戦フォーク集会が行われる、周囲が住宅に囲まれた池はどこだろうか。昔の善福寺池のような気もするが。そこでのお嬢様・藤原は、田島和子だった。彼女は美人だったので、テレビにもよく出ていたが、草野大悟と結婚してやめた。...
ラスト近く、性交した荒木と小山が、新宿南口を歩いて、炭鉱の男女のごとを話すところは、非常に叙情的で良い。大島の本質は、意外にも叙情的であることを示すシーンだと思う。
この時期の大島渚の周辺には多くの「文化人」がいたことを示す映画である。