2012年に公開された作品だが見ていなかったので、シネマジャックに見に行く。
意外にも客が多くて驚くが、さすがに高齢者が多い。
陸軍の登戸研究所は、正式には陸軍第八技術研究所と言い、日中戦争開始以降の総力戦体制に備えて様々な武器の研究・開発をした秘密研究所だった。
中には、強力な無線による殺人を目指した殺人光線もあり、要は電子レンジの原理で肉体を焼いてしまうもので、至近距離での動物実験には成功したそうだ。
これは、電子レンジと同じなので可能で、実際にオウム真理教は、殺害した人間の体をこれで焼いたことがあるはずだ。
スパイ映画のような万年筆型ピストル、カバンに入れたカメラなどもあったようだが、この手のものはほとんど使用されず、実際に開発、実用化されたのは、風船爆弾と偽札作りだった。
映画は、途中から風船爆弾作りに従事した女学生たち、さらに爆弾を放した茨城の海岸の人たちの証言になる。
B29のような大型爆撃機を作れない日本が、開発したのが風船爆弾で、しかもゴムが乏しいので、楮から作った和紙をコンヤク糊で強化した気球に爆弾を付けてアメリカに向けて飛ばすというのが情けないというか実におかしい。
しかし、注意すべきは、この戦時中は、日本人のほとんど全部が戦争に熱狂し、戦勝報道に浮かれていたことである。
そのことは、途中に挿入される香港占領のニュースの絶叫ぶりにも見て取るとことができる。
この映画での挿入では、そこまで写っていないが、日本軍の占領の後、捕虜になった英軍兵に対して、
「捕虜になって恥じることのない英軍兵」といういかにも侮蔑したナレーションがついているのだ。
多分、多くの日本人にとって戦争で、見たことも行ったこともない大国の英米に先勝したことは予想外のことで、大変な喜びだったことは想像できる。
それは、サッカーワールドカップで、日本が勝ったことを想像すれば容易に感じられるだろう。
当時、日本の新聞、ラジオ、雑誌等が熱狂し、国民を煽ったのは間違いなく、戦争報道は新聞の販売部数を増やしたのである。
よく知られているように風船爆弾の戦果は、モンタナ州の山中に落ちて数人が死傷しただけだったが、一応アメリカに空からの攻撃の恐怖を与えたのである。
さて、偽札作りは、当初は写真製版で作っていたが、日本が香港を占領し、中国の紙幣である「法幣」の原版と印刷機を入手してからは、本格的に印刷されるようになる。
そうなると偽札ではなく、本物の紙幣であり、それを軍が現地に持って行き、食糧をはじめ、軍需品の調達に使う。
また、そのことによって中国国内のインフレも作り出したのである。
どうやら中国側もそれは分かっていたようで、日本と中国側が秘密裏に紙幣や物資、情報を交換した話も出てくる。
要は、戦争でも支配者側は損をせず、いつもバカを見るのは庶民であることに日本も中国も変わりがないことがわかる。
日本軍の兵站、補給は、基本的に「現地調達方式」であり、それは多くは現地での略奪につながり、また問題の「従軍慰安婦」にもなる。
これに対してアメリカは、すべてのものを本国から持って行く方式である。
ただ女性を軍に帯同することはできないので、妻帯者は一定期間で本国に戻すローテーション方式だった。
この辺は、第一次世界大戦で、従軍した男に代わって社会のあらゆる場に女性が進出し、その結果1920年代から女性の力が強かった英米の事情でによっているのだろう。
その点、日本では女性の権利はほとんど認められていなかったので、その結果「従軍慰安婦問題」も起きたと言えるだろう。
この問題は複雑で、私の考えは、従軍慰安婦はあったが、それが強制だったか否かは、かなり微妙な問題だと思う。
なぜなら、こうした従軍慰安婦は、当時でも良いことではないと認識されていたので、直接に軍や行政が行うことはなく、民間業者にやらせ、また文書による指示等の証拠が残らないように行っていたからである。
しかし、だからといって従軍慰安婦が存在したことは事実で、問題であることは間違いない。
最後、明治大学は、資料館を作り、関係資料を保存していることが出てくる。
なかなかきちんとした対応だと思う。
シネマジャック
意外にも客が多くて驚くが、さすがに高齢者が多い。
陸軍の登戸研究所は、正式には陸軍第八技術研究所と言い、日中戦争開始以降の総力戦体制に備えて様々な武器の研究・開発をした秘密研究所だった。
中には、強力な無線による殺人を目指した殺人光線もあり、要は電子レンジの原理で肉体を焼いてしまうもので、至近距離での動物実験には成功したそうだ。
これは、電子レンジと同じなので可能で、実際にオウム真理教は、殺害した人間の体をこれで焼いたことがあるはずだ。
スパイ映画のような万年筆型ピストル、カバンに入れたカメラなどもあったようだが、この手のものはほとんど使用されず、実際に開発、実用化されたのは、風船爆弾と偽札作りだった。
映画は、途中から風船爆弾作りに従事した女学生たち、さらに爆弾を放した茨城の海岸の人たちの証言になる。
B29のような大型爆撃機を作れない日本が、開発したのが風船爆弾で、しかもゴムが乏しいので、楮から作った和紙をコンヤク糊で強化した気球に爆弾を付けてアメリカに向けて飛ばすというのが情けないというか実におかしい。
しかし、注意すべきは、この戦時中は、日本人のほとんど全部が戦争に熱狂し、戦勝報道に浮かれていたことである。
そのことは、途中に挿入される香港占領のニュースの絶叫ぶりにも見て取るとことができる。
この映画での挿入では、そこまで写っていないが、日本軍の占領の後、捕虜になった英軍兵に対して、
「捕虜になって恥じることのない英軍兵」といういかにも侮蔑したナレーションがついているのだ。
多分、多くの日本人にとって戦争で、見たことも行ったこともない大国の英米に先勝したことは予想外のことで、大変な喜びだったことは想像できる。
それは、サッカーワールドカップで、日本が勝ったことを想像すれば容易に感じられるだろう。
当時、日本の新聞、ラジオ、雑誌等が熱狂し、国民を煽ったのは間違いなく、戦争報道は新聞の販売部数を増やしたのである。
よく知られているように風船爆弾の戦果は、モンタナ州の山中に落ちて数人が死傷しただけだったが、一応アメリカに空からの攻撃の恐怖を与えたのである。
さて、偽札作りは、当初は写真製版で作っていたが、日本が香港を占領し、中国の紙幣である「法幣」の原版と印刷機を入手してからは、本格的に印刷されるようになる。
そうなると偽札ではなく、本物の紙幣であり、それを軍が現地に持って行き、食糧をはじめ、軍需品の調達に使う。
また、そのことによって中国国内のインフレも作り出したのである。
どうやら中国側もそれは分かっていたようで、日本と中国側が秘密裏に紙幣や物資、情報を交換した話も出てくる。
要は、戦争でも支配者側は損をせず、いつもバカを見るのは庶民であることに日本も中国も変わりがないことがわかる。
日本軍の兵站、補給は、基本的に「現地調達方式」であり、それは多くは現地での略奪につながり、また問題の「従軍慰安婦」にもなる。
これに対してアメリカは、すべてのものを本国から持って行く方式である。
ただ女性を軍に帯同することはできないので、妻帯者は一定期間で本国に戻すローテーション方式だった。
この辺は、第一次世界大戦で、従軍した男に代わって社会のあらゆる場に女性が進出し、その結果1920年代から女性の力が強かった英米の事情でによっているのだろう。
その点、日本では女性の権利はほとんど認められていなかったので、その結果「従軍慰安婦問題」も起きたと言えるだろう。
この問題は複雑で、私の考えは、従軍慰安婦はあったが、それが強制だったか否かは、かなり微妙な問題だと思う。
なぜなら、こうした従軍慰安婦は、当時でも良いことではないと認識されていたので、直接に軍や行政が行うことはなく、民間業者にやらせ、また文書による指示等の証拠が残らないように行っていたからである。
しかし、だからといって従軍慰安婦が存在したことは事実で、問題であることは間違いない。
最後、明治大学は、資料館を作り、関係資料を保存していることが出てくる。
なかなかきちんとした対応だと思う。
シネマジャック