私は、試写会で映画を見たことがほとんどないが、その少ない作品の一つ。1970年、当時広告代理店にいた先輩の島村さんの招待券で、林さん、そして手島さんと4人で、東宝本社の試写室で見た。
その後、どこかの名画座の併映で見て、テレビでも1回見たが、今回見て、篠田の娯楽作としては、かなり上だと思った。
大島渚、吉田喜重らと松竹ヌーベルバーグと言われるが、篠田が最も娯楽映画的な資質があり、面白い映画を作っても上手い。
脚本が寺山修司で、歌舞伎の『天保六花撰』などの人物を取り出して映画化している。
撮影が岡崎宏三さんで、「錦絵をねらった」と言っているが、美術の戸田重昌と合って、感じはよく出ている。
丹波哲郎、岩下志麻、仲代達矢は、当時すでに大スターだったが、他は、新劇やアングラ劇の連中が多く、女中役で鈴木仁美君も出ているが、彼女は小山台高校演劇班で2年下にいたのだ。
蜷川幸雄、中村敦夫、渡辺文雄、米倉斉加年、山本圭、大地喜和子、芥川比呂志、小沢昭一などが出ていて、今見ると豪華だが、その後売れた連中が多いのは、篠田の眼力と政治力もすごい。
映画が終わって、エレベーターで篠田と一緒になったが、たぶんアメリカの代理店に対してだろうと思うが、「パナビジョンカメラ・イズ・グッド」と篠田は言っていた。
製作が一応にんじんクラブなので、製作担当は小笠原清さんになっていた。
この後、小笠原さんは、横浜港のPR映画の監督をされているのだが、今は小田原で、地元の文化・歴史の専門家として活躍されているようだ。