1950年の松竹映画、監督は大庭秀雄で、主演は佐分利信、木暮美千代、そして津島恵子である。
原作は、大佛次郎で、外国にいて行方不明となっていた父親の佐分利が、戦後の日本で娘の津島恵子と再会する話であり、当時戦争で行方知らずになった家族が沢山いたことを反映した物語だといえる。
かなり長い間、NHKでは『訪ね人の時間』という「・・・という人を知りませんか」と放送していたものだ。
話としては、かなり上流に属する人間の再会話で、これを庶民化したのが、『君の名は』だとも言えるだろう。これは、大佛と菊田一夫との差でもある。
これを見て面白いのは、出てくる男は、みな卑怯なことで、戦時中に憲兵だった三井公次は、戦後は新聞記者になって進歩派に属している。
津島恵子の母親の三宅邦子が再婚した相手は、大学教授の山村聰だが、選挙に出るために、津島と佐分利の再会がスキャンダルにならないかだけを心配している。
木暮美千代の周りにいるのが学生の岩井半四郎で、軽薄なアプレゲールにされている。
この映画で正義とされているのは、孤独な人の佐分利信と木暮美千代だけなのだ。
この後、日活で、吉永小百合と森雅之、高峰三枝子で再映画化されて見たが、なんともピント来ない作品だった。監督の西河克己も上手くいかなかったと言っている。
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