東映の監督中島貞夫に最初に注目したのは、たぶん早稲田大学映画研究会4年だった梶間俊一さんだと思う。
1966年、私が大学に合格し、憧れの早稲田の映研に入ったとき、最高のイデオローグで、事実、この年の11月には、「戦後映画の再検討」というようなタイトルの映画会を大隈講堂でやった。
一部は、小川徹の講演で、内容は増村保造の『兵隊やくざ』のことで、ここでの田村高広と勝新太郎の、頭と肉体の二元論だったと記憶している。
その後、大島渚の『飼育』、吉田喜重の『秋津温泉』、深作欣二の『誇り高き挑戦』と並んで、中島貞夫の『893愚連隊』を上映し、これが一番好評だったのだ。
大島の『飼育』も、ほとんど上映されない作品で、深作の『誇り高き挑戦』も結構面白かったが、なにせ主人公が鶴田浩二だったので、多くの若い学生には受けていなかったと思う。
その点、松方弘樹などの若者が、「ネチョネチョ生きて行こう」というのは、時代的に受けていたと思う。
彼は、以下のような映画を作っており、かなり多作である。
1963.11.20 関の弥太ッぺ 東映京都 ... 助監督 1964.09.05 忍者狩り 東映京都 ... 助監督 1964.10.03 くノ一忍法 東映京都 1964.12.12 くノ一化粧 東映京都 1966.03.10 旗本やくざ 東映京都 1966.05.15 893愚連隊 東映京都 1966.07.01 男の勝負 東映京都 1966.10.30 任侠柔一代 東映京都 1967.06.03 あゝ同期の桜 東映京都 1967.07.30 大奥(秘)物語 東映京都 1967.11.01 続大奥(秘)物語 東映京都 1967.12.23 兄弟仁義 関東兄貴分 東映京都 1968.02.22 尼寺(秘)物語 東映京都 1969.01.18 にっぽん’69 セックス猟奇地帯 東映京都 1969.10.15 日本暗殺秘録 東映京都 1970.06.04 戦後秘話 宝石掠奪 東映東京 1970.08.14 温泉こんにゃく芸者 東映京都 1971.01.12 驚異のドキュメント 日本浴場物語 東映京都 1971.06.01 懲役太郎 まむしの兄弟 東映京都 1971.10.14 セックスドキュメント 性倒錯の世界 東映京都 1971.11.19 現代やくざ 血桜三兄弟 東映京都 1972.02.03 まむしの兄弟 懲役十三回 東映京都 1972.06.21 木枯し紋次郎 東映京都 1972.08.25 まむしの兄弟 傷害恐喝十八犯 東映京都 1972.09.14 木枯し紋次郎 関わりござんせん 東映京都 1973.02.03 セックスドキュメント エロスの女王 東映京都 1973.02.10 鉄砲玉の美学 白楊社=ATG 1973.03.03 ポルノの女王 にっぽんSEX旅行 東映京都 1973.05.24 女番長 感化院脱走 東映京都 1973.09.15 東京=ソウル=バンコック 実録麻薬地帯 東映京都 1974.03.30 ジーンズブルース 明日なき無頼派 東映京都 1974.06.01 唐獅子警察 東映京都 1974.08.31 極道VSまむし 東映京都 1974.11.01 安藤組外伝 人斬り舎弟 東映東京 1974.12.07 脱獄広島殺人囚 東映京都 1975.03.08 まむしと青大将 東映京都 1975.06.07 暴動島根刑務所 東映京都 1975.08.09 暴力金脈 東映京都 1975.10.18 極道社長 東映京都 1976.01.31 実録外伝 大阪電撃作戦 東映京都 1976.05.15 狂った野獣 東映京都 1976.09.04 沖縄やくざ戦争 東映京都 1976.10.01 バカ政ホラ政トッパ政 東映京都 1977.01.22 やくざ戦争 日本の首領 東映京都 1977.05.28 日本の仁義 東映京都 1977.10.29 日本の首領 野望篇 東映京都 1978.04.01 犬笛 三船プロ 1978.09.09 日本の首領 完結篇 東映京都 1979.03.24 総長の首 東映京都 1979.09.01 真田幸村の謀略 東映京都 1980.11.15 さらば、わが友 実録大物死刑囚たち 東映東京 1981.11.28 アゲインスト むかい風 綜芸 1982.10.30 制覇 東映京都 1983.01.29 人生劇場 東映京都 1984.01.14 序の舞 東映京都 1985.05.11 瀬降り物語 東映京都 1990.01.20 女帝 春日局 東映京都 1990.09.15 激動の1750日 東映京都 1991.06.15 新極道の妻たち 東映京都 1991.11.19 極道戦争 武闘派 東映京都 1994.05.14 首領を殺った男 東映=東映ビデオ 1996.06.01 極道の妻たち 危険な賭け 東映京都撮影所 1998.01.17 極道の妻たち 決着 東映京都撮影所内容的にも、時代劇、ヤクザ映画、実録もの、ATGと極めて多彩であり、やっていないのは、SFくらいだろう。
ただ、器用な性か、深作の『仁義なき戦い』のようは、完璧なヒットというのがなかったのは、やはり東大卒という頭の良さの性だろうか。
岡田茂によれば、会議をやって全員がいいというような映画はヒットしないもので、ほとんどが反対するが、監督や役者が「絶対にやりたい」と頑張るものが当たるそうで、『仁義なき戦い』はそうだったそうだ。
私の個人的には、1974年の『ジーンズブルース・明日なき無頼派』が一番好きで、ここでの渡瀬恒彦と梶芽衣子は非常に良かったと思う。