前に降旗康男監督の作品として『地獄の掟に明日はない』を評価した。
彼の監督デビュー作の『非行少女ヨーコ』は、今見ると相当に笑える映画だが、公開当時は、早稲田の映研でも
「東映にもすごい新人監督が出てきた!」と騒がれたものだ。
そして、次の作品が高倉健主演なので、さらに期待が高まり、見るとかなり良い作品だった。
共演は、三国連太郎と十朱幸代だった。
だが、これには二つの問題があった。
一つは、筋書で、言うまでもなくジャン・ギャバンの映画『望郷』の焼き直しであることだった。
もう一つは、音楽で、八木正生だが、これが完全にマイルス・デイビスの『スケッチチズ・オブ・スペイン』なのだ。よくもここまでそっくりに使うのかと思ったものだ。
だが、こうしたことは、当時よくあったことで、ある日活映画を見たら、音楽は三保敬太郎だったが、これもマイルス・デイヴィスの『セブンステップス・イン・ヘブン』、『天国への七つの階段』なのだ。
まあ、当時は、ジャズと映画のファンは別々だったので、誰にも文句は言われなかったものだが。