池広一夫監督が、93歳で、テレビの『終着駅』シリーズで、最後の作品とするそうだ。
大映時代の最高作は、1958年の市川雷蔵主演の『ひとり狼』だと思う。
有楽町のスキヤバシ映画で、田中徳三監督の『怪談雪女郎』との2本立てで見た。
冒頭の、ウイリー沖山の大映レコードの主題歌から始まり、最後の語り手の長門勇の
「逃げ足も早いぜ・・・」まで、非常に語り口の良い作品だった。
これは、捨て子として生まれた主人公の雷蔵が、武士の家で育てられ、その家の娘の小川真由美と恋仲となる。
もちろん、卑しい身分の雷蔵と小川真由美の結婚は認められず、「犬め」として家を出され、侠客として生きていく。
それを、長門勇と駆け出しの長谷川明男の目を通して描くという筋書きが素晴らしい。
小池朝雄らなどの、雷蔵を敵視する連中との殺陣も良い。
全体を貫く、市川雷蔵の孤独の美しさが何と言っても絶品である。
森一生監督の『ある殺し屋』、『薄桜記』とならぶ、市川雷蔵の最高作品だと思う。