題名は良いが、中身はダメという作品があるが、これはその典型だと思う。
1966年の松竹映画で、主演は田村正和で、若手人気歌手で、もちろん歌うのだが、これが実にド下手。
『二人の銀座』の和泉雅子も、音痴なのだが、あれは山内賢が上手くカバーしているので聴けるが、これは田村だけなので、本当にひどい。
こんなレベルでよくレコードを出したものだと思う。
田村が、田舎の道路をスポーツカーで飛ばしていると、ダンプカーの追い抜きに会う。
抜きつ抜かれつしているダンプカーの運転主は、藤岡重慶で、中村晃子に運転させているが、結局、ダンプは炉端の店に突っ込んでしまい火事を起こす。
田村は、中村を自分の車に乗せてあげるが、自分が歌手であることを中村が見抜くと、道路に置き去りにしてしまう。
田村は、女性マネージャー小畠絹子と同居していて、彼女の操り人形化している。
二人の部屋では、若者の乱痴気パーティーが開かれているが、この辺の演出は、まったく駄目。
田村は、本当は裕福な家の次男で、長男の沢本忠雄はエリートで、役所の勤務している。この辺の兄弟関係も日活の石原裕次郎映画にそっくり。
田村と中村が車で横浜に行き、氷川丸の甲板で踊ったりするが、これもまったくセンスなし。
監督の水川淳三は、音が真面目な人らしく、こうした歌舞音曲はまったく駄目。
沢本の汚職をもみ消すために、小畠が政界の黒幕の岡田英次に身を任せるなどのどうでもいいところもある。だが、これは、逆に反対派に暴露されてしまい、沢本は窮地に追いつめられ、それは皆田村と中村の性だと逆恨みするなど、実にめちゃめちゃ。
脚本の元は、大津皓一で、この人はテレビの『七人の刑事』などを書いていた人で、これまた娯楽映画には不向きな人だ。
最後、なぜか田村正和のリサイタルは大成功するが、中村晃子は、田舎に戻ると言って上野からたつ。
そこへ、田村は、全力で駆けつけて終わる。
音楽が八木正生で、どきどきジャズ的なメロディーが流れる。
衛星劇場