昔、宝塚映画という会社があった。東宝系で、小津安二郎の『小早川家の秋』なども作ったが、これは五社協定外だったので、他社のスタッフ、キャストを使えたのだ。
もう一つ意味があり、東宝系で時代劇を公開することで、関西の時代劇スタッフを使って時代劇を作ることだった。
監督は、大映の安田公義で、この人は地味だが、稲垣浩の弟子で、抒情的な作風がよかった。
最初に驚いたのは、川崎の映画館に内藤洋子の映画を見に行ったときで、『殺人者』には非常に驚いたものだ。
ここでは、権八の中村扇雀は、因幡の藩の作事奉行・高田稔の息子で、河川改修で、悪家老杉山昌作九の農民弾圧に反対して、運河開削を主張する。扇雀の恋人は言うまでもなく扇千景先生である。
だが、藩主には通らず、農民の窮状との板挟みで、自害してしまう。
扇雀は、田畑の溜池化の工事に従事するが、その中で杉山が、母親の市川春代を陵辱したことから、杉山を殺して江戸に逃亡する。もともと、杉山は市川が好きだったが、高田に取られたことを恨んでの行為なのだ。
江戸に出てくると、絹問屋の娘中村玉緒と知り合い、さらに遊女の岡田茉莉子にも惚れられる。
杉山の弟の徳大寺伸が仇討ちの許可を得て追いかけて来て、扇雀は町方に捕まり、縛り首とされる。
その時、牢屋に友人の沖涼太郎が来て、杉山の悪事が暴かれ、捕まったことを言う。
扇雀は、慫慂として裸馬に乗って刑場に向かうが、その時江戸に来ていた扇千景は、その場で小柄で自害してしまう。
贔屓の安田にしては、いまいちだが、さすがに時代劇の定石はきちんと踏まえられている作品だった。
衛星劇場