朝、PCで見ると上大岡で『隠し砦の三悪人』をやっているので行く。
私は、これと『酔いどれ天使』、『天国と地獄』の3本が黒澤では好きなのだ。
いずれも、東宝のスタッフ、キャストが総力を上げて作った作品であるところが素晴らしいのだ。
昔、妻と結婚したとき、ちょうど黒澤の『影武者』が公開されていて、銀座に見に行った。
黒澤が初めてだった妻は、「なにこれ?」だった。
その直後、新杉田似合ったビデオ屋で、アメリカ版のこれを見ていると、一緒に見に来て、
「これは、すごい面白いじゃない」と言った。当時、東宝は国内盤は出していなかったので、英文字幕付きを見たのだ。
山名に滅ぼされた秋月の武士三船が、姫の上原美佐と薪に隠した黄金を、強欲な百姓の藤原釜足と千秋実の力を借りて、砦から運び出す。
その策は、山名は、秋月と早川領の国境を警備しているので、いったん山名に入ってそこから早川領に行こうとする。
このアイディアは、1980年代末に東ドイツが、西ドイツ国境を封鎖したとき、多くの東ドイツの人々は、自由化されたハンガリーを経て、西ドイツに多数が逃亡し、東西ドイツの国境閉鎖は無意味になった。この話を聞いた時、東ドイツに、この黒澤映画を見た人がいたのかと思ったものだ。
脚本は、黒澤のほか、橋本忍、菊島隆三、小国英雄らで、次から次へと難問が起きるが、それを解決し、ついには早川領に入れる。
三船敏郎をはじめ、全員が踊る火祭りのシーンは、いつもても素晴らしい。
冒頭に出てきて殺される武者の加藤武が亡くなった現在、主要キャストでご健在なのは、俳優をやめてしまった上原美佐だけだろうと思う。上原は、この後現代劇にも出たが、台詞がすごかった。
上大岡東宝シネマズ