1944年2月に公開された東宝映画、監督は阿部豊である。
フィリピンは、日本軍が占領して米軍を追い払った国だったので、大いに宣伝された。
ほぼ同時期に記録映画『東洋の凱歌』も作られていて、撮影の宮島義勇によれば、そのスタッフもフィリピンに来ていたとのこと。
1943年は、まだ日本軍がある程度の威勢を持っていた時なので、これも威勢が良い。
当初は、八木隆一郎のシナリオでは、スペイン・アメリカの暴政に苦しむ貧農が、日本と協力して立って、と言うものだったそうだ。
だが、それでは纏まらないと言うことで小国英雄の手で、フィリピンでの戦闘を中心に作品化された。
フィリピン攻略来た、日本軍に対して米軍は、マニラを放棄して「無防備都市」としてしまい、バターン半島に逃げ込む。
フィリピン人の子供との挿話があるが、最後はコレヒドール要塞を攻めて、日本軍の勝利になる。
最後、司令官の大河内伝次郎は、将兵に演説する、「これは終わりではなく、始まりにすぎない」
その通りで、翌年にはフィリピンから駆逐されてしまい、マッカーサーにリターンされてしまうのだ。
監督の阿部豊は、ハリウッド帰りで、日本の監督で最初に自家用車を持った欧米派だった。
だが、戦争が始まると反米的になり、戦後も『戦艦大和』を作るなど、そうだったようだ。
しかし、戦後は大した作品はなく、新東宝、日活で監督をしていたが、晩年は落剥していたようだ。
中でましなのは、『細雪』だが、これは原作が3女の雪子であるのに対し、この映画では、4女の妙子・髙峰秀子であることだ。戦後の社会で、蒔岡家ではなく、一人の女性として自立していこうとする女性を肯定しているのだ。
これは、阿部の意思に反していると思えるが、時代の風潮に従ったのだろうか。
先日、東京に行き、エロビデオ屋で買って来たビデオの1本である。