上映が今日までというので、シネマジャック&ベティに行く。
ペロコスとは、玉ねぎのことで、ハゲ頭の息子岩松了のこと。
岩松は、元は劇作家・演出家だが、最近は俳優の方が多いようだ。
長崎の広告会社に勤める岩松は、高齢の母赤木晴恵と、フリターの息子大和田健介との3人暮らし。
仕事は不景気で上手くいかないが、彼はライブハウスで自作曲を歌うのが唯一の趣味、一番の気がかりは母が最近認知症が進んでいること。
日常生活の不都合から、グループホームに入所させることになるが、そこの入所者はまるで子供に戻ったようなおかしさ。
監督の森崎東は、そうした認知症を嘆くでも、告発するでも、行政等の不備を言い立てるのではなく、彼らの日常のおかしさと悲しさをやさしく見つめる。
森崎は、松竹大船時代から、常に虐げられた者や世間から蔑視されるような人間たちを主人公にして作品を作ってきた。
それは、時として非常にクセのある、重たいものになり、簡単に同意できないときもあったが、ここでも新たな弱者というべき認知症、ボケ老人を対象にしている。
作風は、前作の『ニワトリは裸足だ』あたりから、少し重さが取れて、軽くなったようで、ここでも母と息子の関係は、異常に歪ませることもなく、普通のこととして描いている。
赤木の若い頃が、原田貴和子でその友人が原田知世というのが上手い配役である。
原田貴和子の夫で、酒乱の父親は、加瀬亮というのも適役である。
最後、長崎のランタン・フェスティバルで、赤木が過去の追想にひたり、一瞬意識を戻した場面は、大変感動的である。
それにしても人の一生というものも、実に儚いものである。
わずか数十年しか人間相互の関係はなく、いつか消えてしまう。
だが、それが人生だとして、どこかで何かにつながり、誰かに受け継がれていくものなのである。
森崎監督の人徳だろう、主演の赤木、岩松、大和田らの他、グループホーム職員の根岸季衣、赤木の姉妹の島かおりや長内美奈子など、多くの古い役者が出ている。
キネマ旬報第一位だそうだが、それにふさわしい作品である。
シネマ・ベティ