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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『狼火は上海に揚る』は2002年に見たことを言う

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12月7日は、日本映画学会の15回大会で京都に行く。会場は京都大学大学院・人間・環境学研究科棟の会議室。
要は、時計台の本部の反対側の奥の会議室。
ここにしても、大阪大学にしても、国立大学は広いなと思う。
大阪大学は、阪急の駅から15分くらい歩いてやっと正門に着き、そこから20分くらいかけて会場に着く。それに比べれば、近いものだが。

2人目の東大の特任研究員の朱芸綺さんが、戦中期の日中映画協力の進め方について発表された。
1942年、国内の松竹、東宝、大映の3社は中国の中華電影と協力し、映画製作を進める。
東宝は衣笠貞之助、松竹は溝口健二が当たったが両者ともできず、大映は稲垣浩監督、阪妻主演で『狼火は上海に揚る』を企画し、実際に中国での撮影もやって無事公開された。
彼女は、これは戦後モスフィルムにあったものの返還フィルムと報告されたので、「2002年に横浜で見ました」と言っておく。
調べると、2002年7月に黄金町のシネマジャックで、やはり阪妻の『狐の呉れた赤ん坊』と一緒に見ていた。
衣笠の中国での作品はものにならなかったが、後に反イギリスの映画『進め独立旗』となって結実している。
『狼火は上海に揚る』は、中国の太平天国の乱で、日本から来た高杉晋作の阪妻が、イギリス帝国主義に怒り、しかし日本もこうなる可能性もあるぞという決意する映画で、これは実話である。
『進め独立旗』は、長谷川一夫が、在日のインド人王子(どこかの藩国の王子だろう)で、日本でイギリスからの独立運動をやっているが、イギリスの諜報員に捉まり、英国大使館に軟禁されるというひどい反英映画なのだ。
このように、実は1941年の真珠湾攻撃まで、日本で反米映画はほとんど作られていなくて、反英映画はあったことも付言しておく。

午後、一橋大の正清健介君がいつものように、小津安二郎の研究。今回は小津映画のタバコで、「たばこを吸えない男性と吸う女性」
小津の映画で、男性がタバコを吸うのは、実は吸うのを止める瞬間を表現しているというもので、当該の作品が映された。
1950年代に専売公社が「タバコは歩くアクセサリー」とのキャッチで、司葉子、団玲子、香川京子等を使って大宣伝をした。
その前に、日本映画でタバコを吸う女性は、水商売、職業婦人、女工など、母性に対立する女性とされて来たとあった。
その通りなのだが、その中に藤純子と江波京子の「女博徒」が抜けていませんかと終わった後、直接正清君に言うと
「緋牡丹博徒は気が付きませんでした」とのこと、江波がタバコを吸っていたかは記憶にないが、緋牡丹のお竜こと矢野竜子は喫煙してように思う。

夜は、学友会館での懇親会で、ここは京大オーケストラの本拠地で、東宝の監督丸山誠治は、オーケストラの一員だったはずだ。
会場は全部木張りで、音が良いようにできている。
ここでは、成瀬巳喜男研究で有名な明治大のスザンヌ・シェアマン先生とお話しする。
先生は、歌舞伎の『たぬき』を見に行くそうで、今月のとは別に『たぬき』という劇があり、山田五十鈴の一八番で、これは立花屋橘之助という女性芸人をモデルにしたものであることを教えると、「なぜ女性が男名前を使うのですか」と質問される。
これは一度調べてみる価値があると思った。
こういう会合に出ると、いつも新しい疑問が出てうれしい。
京都は非常に寒い一日だったが。

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