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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『異邦人』

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先週の金曜日、大学の劇団の先輩たちと日暮里で飲んだ。
先輩3人は、Dー倉庫という最低劇場で芝居を見た帰りなのだが、私はこのDー倉庫があまりにひどい劇場なので行かなかったのだ。
そこはまず、入口から階段で受付に行く。そこからなぜか10段くらい降りる。今度はぐるぐると暗い階段を二階まで昇り、やっと客席にたどり着く。
そこから不安定な通路を降りて席に着くのだ。バリアだらけの劇場なんて許せないと私は思うのだ。
荒川区役所の担当の強い行政指導を願う次第である。

さて、先輩の一人の高校は、早稲田学院高校で、そこでも演劇部にいた。
そして、ある日校長が演劇部の稽古を見に来るというので、皆びっくりしたそうだ。
何をやったのかは聞かなかったが、稽古の終了後、校長は言った、
「君たち、プロの俳優の指導を受けた方がいいな・・・」
校長は、ヘーゲルの研究家で翻訳もある樫山欽四郎先生で、娘は、後にNHKの朝ドラ『おはなはん』の主役となる樫山文枝のわけだ。



『異邦人』は、東北の町の話で、樫山の村本早苗は夫哲夫(小杉勇二)と洋食屋「むらもと」をやってきたが、近年は高齢化で客が減りつつあるが、常連の農家の親爺遠藤(佐々木梅治)はいつもの通りに飲んでいる。
客はもう一組いて、それは工場の副工場長と主任で、問題は雇用しているベトナム人のこと。
町には、ベトナム人労働者、実は技能実習生が来ていて、店の近くのアパートには多くのベトナム人が住んでいて、ゴミ出しや深夜までの大騒ぎで問題になっている。
樫山らには、長男、長女がいて、長男涼太(斎藤尊史)は東京のレストランで修業した後、村に戻ってきて店を手伝っている。
長女・友紀の中地美佐子は、町役場に勤務し、外国人問題を担当していて、遠藤の家で働くことになったグエン(神敏将)の日常生活の相談を受けていたことから、親しくなり、グエンからの申し込みで付合うようになっている。
哲夫は、グエンが実はホーチミン市の郊外の豪農の次男で、友紀を連れて帰りたいので、グエン、そしてベトナム人らを嫌っている。

遠藤が倒れて、一時はグエンが、彼の孫娘の明日香(金井由妃)と結婚するか、などのことも起きるが、最後は、弟の涼太の言葉に推されて中地が、グエンと結婚しベトナムに行くらしいところで幕。

作・演出の中津留晃仁の脚本には、生の台詞も出てくるが、それを生に見せないのは、民芸の役者たちの力であると思う。
かつて我々にとって劇団民芸など、「敵」のように思っていたが、最近見てみると演技は上手いし、役者のお行儀が良いところは見ていて気持ちがいい。私の隣の叔父さんは、気持ちが良すぎたのか、ずっと鼾をかいて寝ていたが。
樫山文枝が、いろいろと口出しするところがおかしく、まるでお節介伯母さんだった。
彼女は、市原悦子の跡を継いで、『家政婦が見た』シリーズをやったら適役だろうと思った。
紀伊国屋サザンシアター




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