台風21号は、神戸など、関西の地方を襲い、まるで特撮映画のシーンのように車が飛び、ビルの壁などが壊れるのには本当に驚く。
日本は台風など自然災害の多い国なので、映画でも多く作られている。
大映には『風速75メートル』というのもあったが、日活で石原裕次郎と宇野重吉が親子を演じた『風速40メートル』などは結構いい映画だったが、なんといっても重要な作品の契機になっているのは谷崎潤一郎の映画『細雪』である。
そこでは、昭和13年の関西大災害の洪水が描かれていて、蒔岡家の4女妙子の洋裁学校が水害に襲われ、そこに元は奥畑商店の使用人だった男で、カメラマンになった米倉によって救い出される。一方、奥畑のドラ息子の啓ボンは、きれいな背広でやってきて、到底救出はできず、ついに妙子に愛想をつかされる。
この『細雪』は、昭和25年に新東宝、34年に大映、そして53年に東宝で製作されているが、最初の阿部豊監督と次の島耕二作品では台風のシーンが描かれている。
だが、映画『細雪』としては一番に出来が良く、晩年の市川崑映画としても最高の『細雪』には、台風のシーンはない。
この市川崑映画では、女優たちの着物などが非常に豪華で、また二条城での花見などがあるが、ほとんど造花による作り物であり、そうしたところに予算を使いすぎたためだろうか。
この市川作品では、原作にはない、次女の婿の石坂浩二が、蒔岡家の次女で、家に居候している3女の雪子の吉永小百合が、実は密かに好きという構成が仕掛けられている。
その結果、雪子は、いろいろと見合いをするが、石坂は本心では見合いが成功せず、いつまでも自分たちの家にいてほしいというドラマができている。これは大変に優れた原作への解釈だったと思う。